企業再生コンサルタントとは？他のコンサルティングとの違い
「企業の医者」ともたとえられるコンサルタントには、さまざまな種類が存在します。その中のひとつである、企業再生コンサルタントについてご存じでしょうか？企業コンサルタントについて知識を身につけておくと、経営が非常時に陥ったときへの備えになります。そこで今回は、企業再生コンサルタントについてご紹介しましょう。
企業再生コンサルタントとは
企業再生コンサルタントとは、経営危機に直面した企業の再建をサポートする専門家で、わかりやすくいえば企業の救命救急士のような存在です。ここで突然ですが、全国の企業の赤字率はどのくらいかご存じでしょうか？2021年公表の都道府県別「赤字法人率」によると、65％もあるそうです。
このデータからもわかるように、多くの企業は資金繰りの悪化や事業の経営不振といった理由で大変苦しんでいます。企業再生コンサルタントはこうした企業を財務、人事、事業内容などさまざまな角度から分析することで、経営を健全な状態へサポートするプロフェッショナル集団なのです。ちなみに解決対象が企業全体なら企業再生と呼びますが、対象が事業であれば事業再生と呼ばれます。
■企業再生コンサルタントの需要は上がっている
大手企業にとって企業再生コンサルタントの存在は欠かすことができません。たとえば、2008年のリーマン・ショックにより経営が破綻した日本航空をはじめ、カネボウやダイエー、吉野家など、誰もが知る大手企業も企業再生コンサルタントによって蘇った過去があるのです。もちろん大手だけではなく、中小企業にとってもニーズは上がっています。
社会の流れを見ればリーマン・ショック、東日本大震災、そして新型コロナウイルス感染拡大とますます混迷を深めました。その一方でコンサルタントサービスを依頼する企業は2008年～2012年の5年間で、約3.7倍にも増えています。（帝国データバンクの調査より）つまり変化のスピードが早くなる程、企業コンサルタントに対する需要が上がっているのです。
企業再生コンサルタントと他のコンサルティングとの違い
企業再生コンサルタントは「実行する」ことを念頭に置いたコンサルティングが特徴です。素早く対応できるオペレーションやキャッシュフローの改善をしたり、時には企業再生コンサルタントが直接経営に携わったりすることもあります。
一方で、ほかのコンサルティング（戦略コンサルティング）はプロジェクトに関する期間の多くをデータ収集や分析に費やし、結果をレポートという形でまとめるのです。つまり両者の違いは、（あくまでアイデアを出すか、実際に実行に移すか）という点で違います。
また、企業再生コンサルタントは業務上、「痛み」がともなう点も違うのです。「痛み」とはリストラや事業撤退に売却といった企業としてはネガティグな部分。それに加え依頼側の企業も経営破綻に追い込まれているので、コンサルティングは殺伐とした雰囲気の中で行われることもあります。
企業再生コンサルタントの支援方法
企業再生コンサルタントはどのような支援方法で企業を立て直しているのでしょうか？ここでは企業再生コンサルタントの主な手法を3つ紹介します。
■リスケジュール
「リスケジュール」はリスケとも略されますが、一般的には「予定を立て直す」という意味で使われます。ただし、コンサルティング業界では金融機関に対して、返済期限を延長してもらうなどの交渉を指すのです。たとえば返済金が企業を圧迫している場合には、ローンの支払いを延長してもらうか、追加融資を受けることで、新たな事業に回していきます。勿論相手に納得してもらえるだけの事業戦略や再生計画があった上で、です。
■ターンアラウンドとワークアウト支援
ターンアラウンド（turn around）とは「方向転換する」という意味ですが、コンサルティング業界では「事業再生」という意味で使います。具体的にはクライアント企業の事業内容や財務、人事などを分析し、経営体制の印新やオペレーションの改善案といった、企業再生までの計画を長期間かけて行うのです。
一方で「ワークアウト」とは、債務超過の状況からの速やかな脱出を指します。具体的には社員のリストラクチャリング（リストラ）、設備費や固定費の削減、または所有資産の売却などです。ターンアラウンドとワークアウトは企業再生ではよく行われる手法で、カネボウもこの手法で企業再生を果たしています。
■ハンズオン支援
ハンズオン（hands on）とは、「実践する」という意味の通り、企業再生コンサルタントが直接クライアント企業へ参入し、経営に深く関わっていく支援方法です。またコンサルタントのみならず、上場を目指すベンチャー企業や、M＆A（合併、買収）を行う際にもハンズオンはよく行われます。ハンズオン支援のメリットは外部の人間が直接経営に携わるので、変革スピードが速くなることですが、変革スピードが速くなる分、社内での反発や対立も起きやすいともいわれているのです。そのため、クライアント企業には事業計画の目的を明確にし、改善方針に対して理解を求めてもらうことが不可欠でしょう。
現在はITの普及にともない、社会の流れも加速化したことで、企業の寿命はさらに縮まりました。時代に合わなくなれば、従来のビジネスモデルではいつか淘汰されてしまいます。企業再生コンサルタントに関する知識も少なからず身につけておくと、非常時の際には役立つことでしょう。
